2016年11月10日 (木曜日)
NTTドコモの下請け会社・ミライト(株)の社員が虚偽の説明、「オーストリアは2005年にザルツブルグ規制を失効させた」
オーストリアのザルツブルグ市が定めているマイクロ波(携帯電話の通信に使われている)の目標値が、「2005年に失効した」という嘘の説明を、電話会社の社員があちこちで住民にふれ回っているらしいことが分かった。
マイクロ波の規制値や目標値、それに提言値は、地域により大きな差がある。ひとつの例を示すと、次のような数値の違いがある。
日本:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)
EU:0.1μW/c㎡【提言値】(室内は0.01μW/c㎡)
ザルツブルグ市:0.0001μW/c㎡【室内目標値】
ただ、ヨーロッパの国々を含めて、国家レベルでは、日本と同じレベルの数値を定めている場合が多く、たとえばザルツブルグ市のあるオーストリアの規制値は、900μW/c㎡ である。これは紛れのない事実である。
しかし、欧米では国が定めている高い数値とは別に、各自治体が独自の低い数値を定めているケースがあるのだ。そして優先され、影響力を持っているのは後者なのだ。特にEUの影響力は大きく、それを指標とした対策を取ることが常識となっている。
なぜ、これだけ数値に大きな差が生まれたのかといえば、国の基準がマイクロ波の熱作用だけしか考慮に入れていないのに対して、EUやザルツブルグ市は、非熱作用も考慮に入れているからだ。
非熱作用とは、おおむね遺伝子毒性のことである。国家レベルの規制値が決められた時期は、マイクロ波には遺伝子毒性はないとする説が有力だったが、その後、マイクロ波を含む電磁波全般(放射線)に遺伝子毒性があるとする説が有力になってきて、国の規制値とは別に目標値や提言値が生まれてきたのである。いわばこれらは世論の結晶なのだ。
◇業界の申し合わせか?
ザルツブルグ市の数値、0.0001μW/c㎡が「2005年に失効した」という説明をわたしが初めて聞いたのは、10月30日に、NTTドコモが東京板橋区小豆沢で行った説明の中でのことだった。
この発言をしたのは、ドコモの下請け会社・ミライト(株)の社員で、「オーストリアは2005年にザルツブルグ規制を失効させた、また他のEU諸国とおなじ、2GHz帯で1mW/cm2(1000uW/cm2)にした」と発言したのである。
発言はビデオに録音録画されており、間違いはない。
その後、メディア黒書に、ザルツブルグ市の数値、0.0001μW/c㎡が「2005年に失効した」とする説明は、ドコモとは別の電話会社の住民説明会でも聞いたという情報提供が寄せられた。その住民説明会に筆者は参加していなかったので、発言の真意は分からないが、それが事実とすれば、電話業界で申し合わせて同じ嘘の説明をしている可能性もある。
これまでわたしは、住民説明会を取材してきたが、会場の入り口で、「黒薮さんは地元住民ではないので入場できません」と入場を断られたことがたびたびある。今、考えてみるとザルツブルグ市の数値についての知識がある者が説明会にいると、数値のごまかしが出来なくなるから、入場を断ったのではないだろうか。
◇バイオイニシアティブ報告ではナノワットの水準
ザルツブルグ市の目標値が2005年に失効したというのは誤った情報である。と、いうよりも真っ赤な嘘である。電磁波問題のある研究者は、これについて、次のようにコメントしている。
1.ザルツブルク勧告値が撤回されたといふ話は聞いてゐない。
2.オーストリア医師会は、2012年に、同じ値(屋内勧告値)を「正常値」としてガイドライン化してゐる。
3.バイオイニシアティブ報告2012年版は、0.3~0.6 nW/cm2(ナノワット、nW=1/1000uW)である。
4.欧州評議会は暫定値として0.1uW/cm2を、将来的にはその0.01(1/100)にすることを示す議案を採択してゐる。
5.ザルツブルクだけでなく、基準値見直しが世界的潮流であることは明らか。