1. 大阪市北区東天満でNTTドコモと住民が対立、5G基地局の設置をめぐる係争、裁判所へ調停申立ての可能性も

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2023年07月08日 (土曜日)

大阪市北区東天満でNTTドコモと住民が対立、5G基地局の設置をめぐる係争、裁判所へ調停申立ての可能性も

今年の2月から、NTTドコモと住民の間で基地局の設置をめぐるトラブルが大阪市北区東天満で起きている。NTTドコモは、2,3年前にビルに基地局を設置した。その後、今年になって5Gの基地局を増設した。

その際に、すぐ近くのオフィス兼住宅に住む住民から苦情が持ち込また。NTTドコモは、通電工事をペンディングにして、住民と話し合いを続けていたが、7月11日に工事を再開する旨を住民に通知した。

住民から相談を受けたわたしは、NTTドコモと工事を請け負っている株式会社ミライト・ワンに対して、計画を断念するように申し入れた。住民に対しては、裁判所へ調停を申し立てるように勧めている。

◆電話会社が提供する偽りの情報

基地局設置をめぐるトラブルで、わたしが電話会社の広報部や工事担当者と話す機会は、このところ増えている。電話会社の主張は、次の3点に集約される。

❶総務省の定めた規制値を遵守して基地局を稼働するので、健康上の被害は起こりえない。

❷マイクロ波(携帯電話の電磁波)についての研究は50年のデータの蓄積があり、「危険」を警鐘する論文は1件も存在しない。

結論を先に言えば、❶も❷も事実ではない。

◆総務省の規制値の嘘

次に示すのは、規制値の国際比較である。数字が高いほど危険性が増す。

日本の総務省の規制値:1000μW/c㎡

ブリュッセル:19.2μW/c㎡

ロシア:10μW/c㎡

スイス:9.5μW/c㎡

欧州評議会の勧告値:0.1μW/m2 (室内は0.01μW/c㎡ )

ザルツブルク市の目標値:0.0001μW/c㎡(※現在は、廃止されている)

欧米でも日本並みに、国が定める規制値はかなり高く設定してある。しかし、日本と違って、欧米では国とは別に自治体などが独自に規制を厳しくしている。その典型が欧州評議会の勧告値である。国と自治体でダブルスタンダードになっているのだ。

また、条例で基地局の設置を規制しているので、日本のように自由に基地局を設置できる状態にはない。

なぜ、欧米では規制値がダブルスタンダードなったのか?

答えは簡単で、マイクロ波の研究が進むにつれて、マイクロ波に遺伝子毒性(発がん作用)があることが判明したからだ。規制値を厳しくせざるを得なくなってきたのである。そこで国に先立って、地方自治体が規制値を決める動きが広がり、規制値のダブルスタンダードが生じたのである。

WHOの外郭団体である国際がん研究機構(IARC)は、2011年にマイクロ波に発がんの可能性があることを認定した。発がん性の5段階評価のちょうど真ん中のレベルだが、2024年までに格上げすることを検討している。

【参考記事】基地局からの距離と発がんの関係を示すブラジルの疫学調査 

 

◆マイクロ波の危険性を示す実験

携帯電話(スマホ)で使われる電磁波と発癌の関係を指摘するアメリカの国立環境衛生科学研究所最新の研究結果が2018年に公表された。11月1日付けのMWN(Micro wave News)によると、同研究所は、NTP(米国国家毒性プログラム)の最終報告で、動物実験でマイクロ波と癌の関係が明白になったと発表した。

NTPは10年に渡る長期プロジェクトで、予算も3000万ドル。最大級のプロジェクトである。最終報告によると、動物実験の期間である2年間に、オスのラットの心臓に悪性腫瘍が増えたことを示す「明確な証拠」が得られたという。一方、マイクロ波を放射しなかった実験群のラットでは、心臓の腫瘍は発生しなかった。

また、脳や腎臓については、腫瘍の発生率こそ心臓よりも高いが、これらの相互関係は弱いと結論づけた。

ちなみにイタリアでも同じ時期に、同じ類型の動物実験が行われ、やはり発がん裏付ける結果となった。

【参考資料】
基地局問題での調停申立てのひな型
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