1. 国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサーは米国政府系の基金NED

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2024年06月07日 (金曜日)

国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサーは米国政府系の基金NED

『週刊金曜日』(6月7日付け)が、「報道の自由度、世界ランキング70位でいいのか」と題する記事を掲載している。国境なき記者団が5月に発表した報道の自由度ランキングを評論した内容である。

筆者は、元朝日新聞記者の柴山哲也氏。日本のランキングが低迷していることを嘆き、その背景として記者クラブが内包する問題にも言及している。

この記事は、議論の前提そのものが間違っている。報道の自由度ランキングの主催者である国境なき記者団がどのような性質の団体なのかを踏まえることなく、ランキングの結果を過信して評論しているのだ。議論の前提に誤りがある。

国境なき記者団のスポンサーは、NED(全米民主主義基金)である。NEDは米国政府系の基金で、活動資金は米国の国家予算から支出されている。1983年に、米国のレーガン大統領が設立した基金で、他国の「民主主義」を発展させるために、市民運動体やNGOに対して資金援助を実施してきた。

特に独立系メディアへの資金提供が際立っている。特定のメディアを支援して、親米世論を形成し、混乱を引き起こした上で、最後にクーデターを誘発する戦略を繰り返してきた。

俗にいうカラー革命を主導したのもNEDである。香港の「市民運動」のスポンサーになっていたのもNEDである。新疆ウイグル自治区に関する世論誘導のスポンサーになったのもNEDである。

NEDは、ニカラグアやベネズエラでも香港と同じ戦略を採用し、実際にクーデターを誘発した。いずれも失敗に終わったが。キューバにも入り込んでいる。

NEDは特に中国を敵視する政策を採用していることでも有名だ。中国外務省のファクトシートは、この組織について、次のように述べている。

「NEDがスポンサーの「国境なき記者団」は長い間、国際社会、広告主、記者組合、外国政府に対して、中国のメディアを差別的に扱い、いわゆる「脅威」に対して警戒するよう扇動してきた。COVID-19が発生してから後、「国境なき記者団」は中国に「コロナウイルス流行に関する情報の検閲をやめる」よう促してみたり、ジャーナリズムに対する政府の「弾圧強化」に警告を発するなど、無責任な発言をしている。また、多くの中国人ジャーナリストが「刑務所に何年も拘留され、不当な扱いを受けて死に至ることもある」という噂を流してた。」(仮翻訳、Fact Sheet on the National Endowment for Democracy 、china-embassy.gov.cn)

柴山氏は、日本のランキング70位が、台湾のランキング27位にも負けていることに言及している。しかし、台湾の27位も明らかにおかしい。というのも、NEDがアジアで最も手厚く支援している「国」(厳密には、中国の自治体)は、台湾であるからだ。次の記事を参考にしてほしい。

台湾の蔡英文総統と全米民主主義基金(NED)のずぶずぶの関係、巧みな「反中世論」の形成戦略

米国が台湾で狙っていること 台湾問題で日本のメディアは何を報じていないのか? 全米民主主義基金(NED)と際英文総統の親密な関係

 

NEDは台湾を27位に位置づける一方で、中国は172位(週刊金曜日の記事では言及されていない)にランクしている。すぐれた調査報道を展開しているアルジャジーラがあるカタールは84位。ロシアは162位である。

報道の自由度ランキングには、評価の客観性そのものに疑問があるが、『週刊金曜日』の記事には、この点に関して何の指摘もしていない。実は、ここが最も肝心な点なのだが。

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