2024年07月09日 (火曜日)

北國新聞社に対する「押し紙」の排除勧告、原文の全面公開

新聞業界の「押し紙」問題の本質を考える上で欠くことのできない公文書の原文を公開しておこう。この文書は、公正取引委員会が1997年(平成9年)12月22日付けで、北國新聞に対して交付した「押し紙」の排除勧告書である。

この事件を契機として、公正取引委員会と日本新聞協会(新聞取引協議会)は、「押し紙」問題解決へむけた話し合いを始めた。そして約2年後の1999年に、独禁法の新聞特殊指定の改訂というかたちで決着した。

ところが不思議なことに改訂された新聞特殊指定は、「押し紙」問題の解決への道を開くどころが、逆に「押し紙」をより簡単に強要できる内容となっていた。実際、その後、「押し紙」率が50%を超えるケースが、「押し紙」裁判の中で判明するようになった。

本稿で紹介するのは、この問題(新聞業界の「1999年問題」)の発端となった公文書である。事件の概要については、下記のURLからアクセスできる。

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2024年07月08日 (月曜日)

―モラル崩壊の元凶、「押し紙」― 西日本新聞・押し紙訴訟の報告

福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責)

去る7月2日、西日本新聞販売店を経営していたAさんが、押し紙の仕入代金3051万円の損害賠償を求めた福岡地裁の裁判で、被告の担当員と販売部長の証人尋問が実施されました。双方の最終準備書の提出を待って、早ければ年内に判決が言い渡される見込みです。

押し紙は、新聞社が販売店に対し経営に必要のない部数を仕入れさせることをいいます。販売店への売上を増やすと同時に、紙面広告料の単価を吊り上げるためABC部数の水増しを目的とする独禁法で禁止された違法な商法で
す。

押し紙は、1955年(昭和30年)の独占禁止法の新聞特殊指定で禁止されてから約70年になります。このような長い歴史があり、国会でも再三質問に取り上げられてきたにもかかわらず、なぜ押し紙はなくならないのか、公正取引委員会や検察はなぜそれを取り締まろうとしないのか、押し紙訴訟に見られる裁判官の奇怪な人事異動の背景にはなにが隠されているのか、といった問題については、マスコミ関係者、フリージャーナリスト、新聞労連、独禁法研究者、公正取引委員会関係者、司法関係者など多方面の関係者、研究者・学者らによって更に解明が進められることが求められます。

新聞の発行部数は1997年(平成9年)の5376万部をピークに、2023年(令和5年)10月には2859万部と半世紀で約46%も減少しています。新聞販売店も2004年(平成16年)の2万1064店舗から、2023年(令和5年)の1万3373店舗と大きく減っています。

このまま推移すれば、10数年後には紙の新聞はなくなるだろうと予想されており、現在進行中の裁判の経過や背景事情について、時期を失せず皆様にお知らせすることはますます重要性を増しています。

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2024年07月03日 (水曜日)

西日本新聞「押し紙」裁判、証人尋問で残紙部数を把握した機密資料の存在を認める、担当員「私が作りました」

長崎県の元販売店主が2021年に起こした西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、7月2日の午後、福岡地裁で行われた。この中で証人として出廷した西日本新聞社の担当員は、原告弁護士の質問に答えるかたちで、同社が管轄する長崎県全域の販売店の残紙の実態を示す機密資料が存在することを認めた。

すでに佐賀県下の販売店については2016年に、この種の資料が存在することが、メディア黒書への内部告発で明らかになっていた。今回の尋問により、長崎県についても、同種の資料を西日本新聞社が内部で作成していた事実が分かったのだ。

既に暴露されている「佐賀県の資料」によると、西日本新聞社は、8月3日に販売店からの新聞の注文部数を確認し、その後、6日に販売店に新聞を搬入していた。しかし、搬入部数が注文部数を超えていた。

たとえば3日の注文部数が2000部で、6日の搬入部数が2200部であれば、差異の200部が残紙ということになる。たとえば次のように。

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2024年07月01日 (月曜日)

7月2日に尋問、西日本新聞の「押し紙」裁判、福岡地裁で、「4・10増減(よんじゅう・増減)」をどう見るか?

西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、次のスケジュールで実施される。

場所;福岡地裁 903号法廷
日時:7月2日 13時から17時
被告:西日本新聞社

この「押し紙」事件では、業界用語でいう「4・10増減(よんじゅう・増減)」が問題になっている。4・10増減とは、4月と10月に「押し紙」を増やす販売政策である。4月と10月のABC部数が、折込広告の定数を決める重要な目安になることから、新聞社が4月と10月に「押し紙」を増やしてABC部数をかさ上げする手口である。広告主の怒りをかいかねない販売政策にほかならない。

原告の元店主は、「4・10増減(よんじゅう・増減)」の被害を受けており、裁判所がそれをどう判断するかが注目されている。

 

 

 

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