1. 新聞ジャーナリズムが機能しない背景に何が? 「押し紙」を放置する国策、年間の闇資金は932億の試算(1)

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2024年06月07日 (金曜日)

新聞ジャーナリズムが機能しない背景に何が? 「押し紙」を放置する国策、年間の闇資金は932億の試算(1)

6月に入ってから、企業の摘発が相次いでいる。

国土交通省は4日、トヨタ、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの各社が不正なデータで型式指定の認定をクリアーしていたことを公表した。型式指定とは、自動車の大量生産の前段で自動車メーカーが、国土交通省に対して環境対策やブレーキ性能など、安全性に関するデータを提出して、同省から認可を得る手続きのことである。

公正取引委員会も4日に、医療メーカーを摘発した。神戸の大手医療機器メーカー「シスメックス」に対し、「抱き合わせ販売」をおこなった疑いで、立ち入り検査を実施した。独占禁止法違反するというのがその根拠である。同社は、血液凝固の機能測定装置を医療機関に販売する際に、検査用の試薬をセットで購入するように条件設置をしていた疑惑がある。

こうした取り締まりは、健全な企業活動を促進する意味で重要だが、日本の産業界の中で、絶対に公権力のメスが入らない領域がある。それは新聞業界である。ここは公権力がメスを入れない領域として周知されている。

その結果、厳重に壁で遮られた業界内部は無法地帯になっている。週刊誌も月刊誌も、そして書籍もめったにこの領域には踏み込まない。書籍広告や書評を掲載してくれる新聞社を敵に回して利益になることはなにもないからだ。

◆試算の根拠

2023年5月に刊行した『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)の冒頭で、わたしは日本の新聞業界が、「押し紙」により、年間に発生させている不正金額の額を試算した。試算では、低く見積もっても、年間に900億円程度の不正収入を得ているという結果が出た。根拠は次に通りである。

日本全国で発行される一般日刊紙の朝刊発行部数は、2021年度の日本新聞協会の統計によると、2590万部である。このうちの20%にあたる518部が「押し紙」で、朝刊一部の卸代金が月間1500円として試算すると、「押し紙」による販売収入は、77億7000万円(月間)になる。この金額を12カ月で掛ければ、932億円になる。

新聞業界全体で年間に少なくとも932億円の「押し紙」による不正収入を生み出しているという結論に至った。この数字に誇張がないことは、次の点を確認すれば明らかになる。

❶大半の新聞社が朝刊だけではなく、夕刊も発行しているが、全紙を朝刊と仮定して試算したこと。購読料は、朝刊単独よりも、朝夕セット版の方がはるかに高い。

❷「押し紙」率を20%として試算したが、これまで全国で提起されてきた「押し紙」裁判では、「押し紙」率が40%、あるいは50%といったケースが頻繁に報告されているが、「押し紙」率を控え目な数字に設定したこと。

❸「押し紙」からも、紙面広告や折込広告の収入が発生しているが、これについては計算から除外したこと。

ちなみに統一教会の問題に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、統一教会による霊感商法などによる被害額は、35年で1237億円である。「押し紙」による被害額の試算は、年間で932億円であるから、これを35年に完全すると、32兆6200億円というとてつもない数字になる。

常識的に考えると、これだけ莫大な額の不正資金を捻出すれば、公権力のメスがはいるものだが、なぜか新聞業界は、例外的な扱いになってきた。その背景には、新聞業界と公権力の闇がある。それは報道のタブーとなっている領域である。(続)