![](http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2016/12/mdk161216b-2.jpg)
◇博報堂事件の第1ステージ
◇テレビCMの「中抜き疑惑」
◇放送確認書の偽造
◇博報堂事件の第2ステージ
◇行政事業レビューシート
◇全省庁に対して情報公開の開示請求
◇通信社OBらの支援
◇報道の広がり
◇戸田裕一社長名で巨額請求を繰り返す
この一年、わたしは博報堂がかかわった事件と向き合った。
その糸口は2月に1本の電話を受けたことだった。化粧品などの通販会社・アスカコーポレーション(本社・福岡市)からの電話で、折込広告の水増し被害を受けた疑いがあるので、資料を検証して、アドバイスをもらえないかという申し入れだった。
断る理由はないので引き受けた。折込広告の詐欺は、わたし自身が取り組んできたテーマである。
数日後、アスカから郵送されてきた資料を精査したところ、確かにアスカが折込詐欺の被害を受けていた可能性があることが分かった。たとえば東京・町田市の新聞のABC部数が約13万部しかないのに、15万枚の折込広告が見積もられていた。新聞購読者にもれなく折込広告を配布しても、13万枚あれば十分で、2万枚が過剰になる計算になる。
もっとも、なにか別の目的で2万枚を余分に印刷したというのであれば、別問題だが。「折込詐欺」は水面下の社会問題になっているので、わたしは取材することにした。
たまたまこの時期にアスカが本拠地としている福岡市近郊の久留米市へ取材にいく予定があった。メディア黒書でも取り上げている佐賀新聞の「押し紙」裁判の取材である。
この機会を利用して、わたしは福岡市のアスカを訪問した。情報の提供会社に直接あって、相手が信頼できる企業かどうかを確かめておく必要があったからだ。
アスカの社員から直接事情を聞いてみると、折込広告に関する疑惑以外にも、テレビCMの「中抜き」疑惑や、嘘の視聴率を提示してCMの口頭契約を結ばされた疑惑など、問題が山積していることが分かった。
係争の相手が博報堂であることも意外だった。紳士的なイメージがあったからだ。ただ、大手広告代理店に対するタブーがあることも知っていた。日本のメディア企業の大半は、広告依存型のビジネスモデルなので、広告代理店を抜きにすると経営が成り立たなくなるからだ。
逆説的に見れば、ジャーナリズムの光があたらない業界は、内部が腐敗していることが多い。タブーの領域こそが最高の取材対象になるのだ。この矛盾がジャーナリズムの魅力でもある。
そこでわたしはアスカに対して、博報堂との過去の取引に関する全資料を提供してくれるようにお願いした。2週間後に、段ボールいっぱいの資料が送られてきた。全資料ではないが、アスカが疑惑を抱いている取引に関する記録である。こうして博報堂事件の第1ステージの取材が始まったのだ。大手広告代理店に対するタブーに挑戦することになったのだ。
ちなみに博報堂は、完全にわたしの取材を拒否した。
続きを読む »