◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)
◇初耳、地方版紙面委員
◇箱島社長に「人事案件の不同意」を送付
◇朝日の取締役会が決定した差別人事
◇闘うジャーナリズムへの報復?窓際族へ
案の定、箱島社長からは何の返事もありませんでした。直接見た訳ではないので真偽のほどは分かりませんが、「箱島氏は『忙しい社長に、こんな長文を送ってくるなんて……』と、社長室の応接テーブルに私からの文書をたたきつけた」と、後日、周辺から聞きました。
それでも社長側近の一人が「この件は社長に代わって、私が話をしたい」と、私に電話してきました。しかし、その後、待てど暮らせど、なしのつぶてでした。
箱島社長の答がない以上、とるべき手段は、内部告発しかありません。でも、私にさえ、まともに答えられないのが、朝日の幹部です。この問題が週刊誌などに取り上げられ、正面から世間の批判を浴びたら、どうなるか。私は不安でした。
というのも、当時、小泉純一郎政権が全盛を迎えていたからでした。私は政治記者時代、まだ奇人変人扱いされていた頃の小泉氏に何回か直接会い、取材したことがあります。歯に衣を着せぬ官庁批判、行政改革の姿勢に強い共感を覚えました。
しかし、首相になり、人気は急上昇。靖国参拝で、憲法9条などの改憲論議が急速に盛り上がっていました。それまで私は、親しくなった小泉氏から、たとえ雑談でも「靖国」や熱心な「親米」は、聞いたことはありませんでした。
郵政民営化を進めるには、自民党の旧来の支持者の応援が不可欠です。小泉氏のことだから、異端児のイメージを拭い去り、保守層の支持を盤石にするために突然、熱心な靖国参拝論者に衣替えしたのではないか…、「どうせ小泉劇場の一環」と、タカをくくっていました。
でも、時として為政者の思惑をも超えて、時代は進んでしまうものです。官庁を握った者の独裁、官庁批判を旗印にした独裁…。「官庁を握った者の独裁」がここまで無駄な公共事業を拡大させた元凶です。でも、官庁、政党の腐敗を批判して権力を握った者の独裁が、いかに国民を不幸に陥れたかは、ナチス、日本の軍部など、過去の歴史を見れば明らかです。どちらの独裁も、世の中を危うくする前兆です。
そんなご時世に、私が朝日の内情を暴露。読者の信頼をこれ以上失っては、「護憲」対「改憲」という、この国の言論バランスを根本から崩しかねません。私は朝日を旧社会党のようにするのが怖かったのです。本来、誰が心配すべき問題か…。でも、保身と派閥抗争にうつつを抜かす社長・幹部が何も考えていない以上、自分で心配するしかありませんでした。
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